江戸時代中期の京都錦市場に生まれ、大胆な構図と細密な筆致、そしてオリジナリティに満ちた天才絵師・伊藤若冲(1716-1800)。
2016年は、若冲生誕300年のお祭りイヤー。
今年の美術展のスケジュールを取り上げた雑誌では、今回の上野の展覧会での出展作のクオリティの高さを取り上げて絶賛していましたので、上野の東京都美術館に行ってきました。
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これが若冲展の看板です。
上野に行ったら大変な混雑。10時開場に対して9時くらいに行きましたが、この大混雑でした。
約2時間待ち、会場に入ることができました。
さすがに、展覧会の中は撮影禁止なので、パンフレットの写真を紹介したいと思います。
最大の目玉は、宮内省所蔵の『動植綵絵』全30幅です。
『動植綵絵』は、絹地に最高の顔料を使い、最高の技術で描かれた傑作です。
絹の裏側からも彩色を施しているので、実際に見ると奥行きが感じられます。
写真では、色鮮やかに感じられましたが、実物は奥の深い何とも言えない上品な色をしていました。
一つ一つじっくり眺めていると、超絶技巧という言葉が浮かんできました。
そして、メインの鳥や動物、花のまわりのすべてに向けた愛情に満ちた眼差しを感じました。
この絵の背景に貫かれているのは、「すべての存在に命があり、仏の慈悲によって祝福されている」という釈迦の教えでした。
それは、『菜蟲譜』に出てくる四季の野菜や池辺に集う生き物たちのゆるい筆致にも感じられました。
今回は、この素晴らしい『動植綵絵』30幅が、京都・相国寺に寄進した『釈迦三尊像』3幅と一堂に会することになりました。
これら33幅は、熱心な仏教徒であった若冲が、亡き両親と弟、そして自分自身の永代供養を祈って京都・相国寺に寄進し、寺の荘厳具として末永く伝えてほしいと願った作品です。
『釈迦三尊像』を中心に、左右に『動植綵絵』を並べ連ねて、仏のための特別な世界を構築していたのです。
この部屋に入ると、3幅のお釈迦様が迎えてくれました。
その周りを囲む様々に描かれた生き物たち。その迫力に圧倒されると共に、大混雑にもかかわらず、とても穏やかな気持ちになりました。
真ん中に置かれたソファにじっと座っている人たちは、疲れたからという訳だけではないでしょう。
こんなに実物の力に圧倒されたのは初めてかもしれません。
ここに居合わせただけでも、大行列に耐えた価値があったと思いました。
もう一つの目玉は、若冲最大の個人コレクターであるジョー・プライスさんとエツコさんご夫妻による「プライスコレクション」です。
24歳のプライスさんがニューヨークの古美術店で出会ったのは、若冲の水墨画でした。
その『葡萄図』はエンジニアだった彼の心を一瞬でとらえました。それは1953年のことです。
彼の人生は大きく変わっていきました。
今回注目すべき作品はモザイク画のように見える枡目描きで動物や霊獣を描いた超大作『鳥獣花木図屏風』でしょう。
西陣織の「正絵(しょうえ)」と呼ばれる下絵に着想を得て手がけたといわれる「枡目描き」は、現代のデジタル画像のようです。
桝目の数は、両隻で86000個以上に及び、そこに数多くの動植物や霊獣が描かれています。
約1センチメートル四方の方眼によって画面を埋め尽くす、まさに空前絶後の手法だといえるでしょう。
本当に発想が豊かでユニークな絵です。
もう一つの桝目描きの作品が、静岡県立美術館にあります。それは、『樹花鳥獣図屏風』です。
数年前、静岡まで見に行きました。どちらも何ともいえない不思議なオーラを放っていました。
いろいろな生き物たちが平和の共存している世界観は、ともすると平和が脅かされようとしている現代に警鐘を鳴らしているかのようです。
それから、音声ガイドがよくできていました。ナビゲーターは上品な声の中谷美紀さん。
作品の解説や若冲の紹介だけでなく、展覧会を監修した岡田美術館館長の小林忠氏のスペシャル解説『孔雀鳳凰図』について、総合監修をした辻惟雄氏のスペシャル解説『動植綵絵』について、また、ジョー・プライス氏の肉声コメントまであって、とても贅沢な35分間でした。
今回は東京で行われたわけですが、この2016年夏~冬には若冲の故郷、京都4か所において若冲展が行われる予定です。
関連記事:伊藤若冲展 2016年夏~冬に 京都4か所で開催
このレポートが参考になればと思います。
関連記事:伊藤若冲ゆかりの相国寺の承天閣美術館と伊藤若冲のお墓です
関連記事:伊藤若冲展再び 若冲ワールドに魅せられて3度目の鑑賞をしました
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